掛 軸
茶道具 美術品
日本ではもっとも多い絵画が掛け軸と思われます。掛け軸は古くは鎌倉時代から飾られており、日本だけでなく、中国、朝鮮など東アジアにおける絵画の代名詞でもありました。しかしながら近年では住居に床の間がなくなっており、その需要が減っております。事実、買取のご依頼が多いのも掛け軸であり、状態によっては一本ではお値段がつかないものもございます。しかしながら貴重な掛け軸が日本には眠っている可能性もあり、場合によっては高額な査定となる場合もございます。
掛け軸は通常、書と絵画になります。また絵画に書を認めた画賛もあります。
(1)書は、良寛や会津八一など書家によるものから、大徳寺や永平寺などお寺の貫主によるものがあります。また政治家や軍人による書も多く、西郷隆盛(南州)、山岡鉄舟、東郷平八郎、伊藤博文などの書を良く目にします。そして正岡子規、高浜虚子といった俳人や北原白秋、与謝野晶子ら詩人も書を掛け軸にされていることも少なくはありません。
(2)絵は、室町・桃山・江戸の水墨画、狩野派・土佐派・住吉派などの絵師による絵画、肉筆浮世絵、文人画、また仏画・涅槃図など仏教に因んだものもあります。明治・大正期には谷文晃・英一蝶・渡辺崋山・酒井抱一といった江戸の画家の掛け軸が好まれ、床の間に掛けられていました。
上記の画家に加え、雪舟、浦上玉堂、俵屋宗達や尾形光琳の琳派など国宝になっているような大家の掛け軸は、残念ながら写し(偽物・贋物)であることが大半です。それだけに箱書きや資料が重要になってきますので付随のものがありましたら、捨てることなくお持ちください。
近代以降である明治・大正・昭和期は横山大観・川合玉堂などの日本画の多くが軸装されています。保管の際は桐箱に収められ、桐箱の蓋の表には題名、裏には作者の落款・押印が認められます。これは共箱と言われ、掛け軸の売買・査定の重要な目安となります。また絹本に描かれているか、紙本に描かれているかも目安になります。
(3)掛け軸は日本だけではなく、中国や韓国(朝鮮)にも歴史があり、唐画や李朝画などと呼ばれるものもあります。特に近年、中国絵画の需要が高まり、斉白石や呉昌硯などの掛け軸は高値で取引されています。また孫文・周恩来・魯迅など日本ゆかりの大家の書なども人気があります。